背景
ロート製薬グループの独自素材である「メタップ®」(グロビンペプチド)は、これまでに血中中性脂肪の低下や脂質代謝の改善作用が報告されており、高齢化社会におけるフレイルや生活習慣病といった課題に対して、異所性脂肪の蓄積抑制を中心とした新たなアプローチへの応用が期待されています。本報では、メタップ®による2種類の肝障害モデル動物における異所性脂肪蓄積(脂肪肝)の抑制を介した肝保護作用、ならびにヒト試験における肝機能の改善作用について報告いたします。
報告①1)
メタップ®によるアルコール性肝障害モデルにおける異所性脂肪蓄積(脂肪肝)の抑制を介した肝保護作用1)
本研究では、ICRマウスを用いてメタップ®の肝保護作用を検討しました。マウスを陰性対照群、陽性対照群(アルコール投与)、およびメタップ®低・中・高用量群の5群に分け、30日間飼育後に50%アルコールを投与して急性肝障害を誘発し、肝臓中の中性脂肪、酸化ストレスマーカー(MDA)、抗酸化酵素活性(Gpx活性)および肝臓の組織病理学的変化を評価しました。その結果、アルコールによって増加した肝臓中の中性脂肪含量はメタップ®中・高用量群で有意に減少し、脂肪肝の改善が認められました。また、すべてのメタップ®投与群でMDA含量は有意に減少し、Gpx活性は有意に上昇しました。さらに、組織病理学的評価において、すべてのメタップ®投与群で、脂肪肝の指標である肝脂肪変性が有意に軽減し、肝臓中の脂肪滴の蓄積が抑制され、脂肪肝の改善が認められました。これらの結果から、メタップ®はアルコール性肝障害モデルにおいて、異所性脂肪蓄積(脂肪肝)の軽減および酸化ストレスの軽減を通じて、肝保護作用を示すことが明らかとなりました。
アルコール性肝障害モデルにおける肝臓中の中性脂肪含量

アルコール性肝障害モデルにおける肝臓中のMDA含量

アルコール性肝障害モデルにおける肝臓中のGpx活性

アルコール性肝障害モデルにおける肝脂肪変性の組織病理学的評価

b 平均順位は各群の全マウスの順位付けの平均値である。
** p<0.01(Mann-Whitney検定)
アルコール性肝障害モデルにおける肝臓の組織病理学的写真(Sudan III染色, 40×)
脂肪滴は赤橙色に染色される。





報告②2)
メタップ®によるガラクトサミン肝障害モデルにおける異所性脂肪蓄積(脂肪肝)の抑制を介した肝保護作用2)
本研究では、メタップ®の肝保護作用を評価するため、7週齢のSDラットを用いて陰性対照群、陽性対照群(ガラクトサミン投与)、メタップ® 1 g/kg投与群、メタップ® 2 g/kg投与群の4群に分け、ガラクトサミンによる急性肝障害モデルを作製しました。メタップ®はガラクトサミン投与の1時間前と8時間後に経口投与し、24時間後に血液および肝組織を採取して評価しました。その結果、陽性対照群で著しく上昇した血清酵素(ALT、AST、LDH)はメタップ® 2 g/kg群で有意に低下し、肝細胞障害の軽減が確認されました。また、陽性対照群で減少した血清アルブミン濃度はすべてのメタップ®投与群で有意に増加し、肝タンパク合成能の改善が示唆されました。さらに、陽性対照群で増加した肝臓中の中性脂肪および総コレステロールは、メタップ® 2 g/kg投与群で有意に減少し、肝臓における脂質代謝が改善し、脂肪肝の改善が認められました。陽性対照群で減少した肝タンパク質含量はメタップ® 2 g/kg投与群で有意に増加し、肝タンパク合成能の改善が認められました。これらの結果から、メタップ®はガラクトサミン肝障害モデルにおいて、異所性脂肪蓄積(脂肪肝)の抑制および肝細胞障害の軽減に加え、肝臓における脂質代謝やタンパク合成能の改善を通じて、肝機能の改善と肝保護作用を示すことが明らかとなりました。
ガラクトサミン肝障害モデルにおける血清中のALT活性、AST活性、LDH活性およびアルブミン濃度
平均値と標準誤差を示した。陰性対照群(n=10)、陽性対照群(n=8)、メタップ® 1g/kg投与群(n=5)、メタップ® 2g/kg投与群(n=10)
* p<0.05, ** p<0.01(Student-t検定)




ガラクトサミン肝障害モデルにおける肝臓中の中性脂肪、総コレステロールおよびタンパク質含量
平均値と標準誤差を示した。陰性対照群(n=10)、陽性対照群(n=8)、メタップ® 2g/kg投与群(n=10)
* p<0.05, ** p<0.01(Student-t検定)



報告③3)
メタップ®によるヒト試験における肝機能の改善作用3)
本研究では、メタップ®配合食品の摂取が日本人健常者の肝機能に及ぼす影響を評価することを目的として、無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験として実施しました。ALT値が軽度高値(20~50 U/L)の20~65歳の男女82名を対象に、1日あたりメタップ® 2000 mgを配合した食品を8週間摂取する群とプラセボ群に無作為に割り付け、主要評価項目をALT、副次評価項目をAST、γ-GT、中性脂肪、コレステロールなどの血液生化学検査項目および自覚的指標(疲労感・睡眠状態)として解析しました。全体解析ではALTやASTに群間の有意な差は認められませんでしたが、中性脂肪が高めの被験者(120〜200 mg/dL)および試験期間中にアルコールを摂取した被験者のサブグループでは、メタップ®配合食品群で対照食品群と比較して8週間摂取後のALTおよびAST変化量の有意な低下が確認されました。これらの結果から、メタップ®は血中中性脂肪が高めの方や、アルコール摂取によって肝負荷を受けやすい健常者において、肝機能マーカーの改善を介して肝機能の改善作用を示すことが明らかとなりました。
アルコールを摂取した被験者のALTおよびAST変化量
平均値と標準偏差を示した。対照食品群(n=25)、メタップ®配合食品群(n=20)
* p<0.05, ** p<0.01(SAS 9.4を用いた解析)


中性脂肪が高めの被験者のALTおよびAST変化量
平均値と標準偏差を示した。対照食品群(n=17)、メタップ®配合食品群(n=11)
* p<0.05, ** p<0.01(SAS 9.4を用いた解析)


下記の参考文献をもとに作図
- 韩峰ら, 薬理と治療, 38(6), 507-512, 2010
- 山本かおりら, 薬理と治療, 38(6), 513-519, 2010
- 松本夏子ら, 診療と新薬, 61(9), 549-560, 2024