異所性脂肪ジャーナル.5
メンタルヘルスと脂肪の関係
異所性脂肪に脳が支配される?
おいしくて、なかなか食べる手を止められないチョコレートやポテトチップス。つい自分を甘やかすその習慣が、実は脳の働きにも深く関わっていました。
ドイツ・テュービンゲン大学で行われた研究では、たった5日間、普段の食事に加えて高カロリーなおやつを食べていると、肝臓に脂肪がたまる(異所性脂肪)だけでなく、脳のインスリン抵抗性が生じ、脳機能が低下することで食べたい気持ちが抑えにくくなり※1、太りやすくなることが分かりました。さらに驚くべきことに、その影響は食事を元に戻した後も1週間以上続いたというのです。
Kullmann S, et. al., Nat Metab, 7(3), 469-477, 2025
高脂肪食が続くと、記憶や感情に影響が
では肝臓脂肪やインスリンは、脳の働きとどう関係しているのでしょう。
インスリンは主に血糖を細胞に取り込ませ血糖値を下げる働きをするホルモン。脳においても様々な働きを担っています。肝臓の脂肪により炎症などが起こると、脳内でインスリンがうまく働かない状態(インスリン抵抗性)になります。その結果、記憶や感情、意欲の制御がきかなくなり、ひいては認知機能の低下やうつ病につながることもあるのです※2。
鈴木亮ら, 東医大誌, 78(2), 141-148, 2020
インスリン抵抗性でうつ病リスクが約2倍?
事実、オランダの大規模な調査では、中性脂肪の増加やHDLコレステロールの低下によりインスリン抵抗性が高いと認められた人は、9年以内にうつ病を発症するリスクが最大89%も高いことが報告されています※3 。一方で、ウエスト周囲径の5cm増加はうつ病リスクを増加させるものの、その割合は11%でした。
つまり、体脂肪がつくよりもインスリン抵抗性があること、つまり異所性脂肪がつくことのほうが、うつ病リスクへの影響が大きいといえるかもしれません。
Watson KT, et. al., Am J Psychiatry, 178(10), 914-920, 2021
異所性脂肪で…「あれ、なんだっけ?」
さらに中国・北京の研究チームの世界計68万人超の観察研究を集めた解析によると、肝臓などに異所性脂肪が蓄積するほど脳の容積が小さくなることが明らかに。また認知スコアも低下しており、特に言語能力や実行機能が低下することもわかったのです※4。
中高年になると時々、言いたいことがあるのに言葉が出てこなかったり、考えていることと別の言葉を話したりするのは、ひょっとすると異所性脂肪のせいかもしれません。
Song ZH, et. al., Front Neuroendocrinol, 70, 101082, 2023
中年期の脂肪管理が、将来の脳を守る
高齢化が進む中、脳の健康寿命のケアは重要な社会課題。オックスフォード大学などの研究では、中年期(48〜70歳)に健康的な食習慣を守り脂肪管理ができていた人は、老年期にも記憶・認知を司る機能が保たれていることがわかりました※5。この結果は、認知症など脳疾患への早期介入に向けての大きなヒント。食習慣と脂肪管理で、脳が健やかな一生をつくるために。MGPでは素材の研究と商品開発を進めてまいります。
Jensen DEA, et. al., JAMA Netw Open, 8(3), e250171, 2025