異所性脂肪ジャーナル.4
心疾患と心臓周囲脂肪
脂肪は、心臓にまでやってくる
心臓にも脂肪がつく。24時間365日動き続けている場所だけに、脂肪がたまるとは想像しにくいですよね。でも異所性脂肪はちゃっかりと心臓にもたまっていきます。そしてこれは皆さんにとっても身近な話。一体どんなリスクがあるのか、何に気をつけたらいいのか、ちょっと調べてみました。
心筋梗塞の原因はドロドロ血だけじゃない
心筋梗塞の原因といえば、真っ先に思い浮かぶのは「ドロドロの血」や「悪玉コレステロール」。ところが最近の研究では、血管の内側だけでなく外側にも危険が潜んでいることが分かってきました※1。
心臓のまわりにつく心臓周囲脂肪は、過剰に増えると炎症を引き起こすサイトカインという物質を放出し、冠動脈の血管壁や心筋そのものに炎症や線維化を引き起こすのです。その結果、動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症といった重篤な心疾患へとつながるリスクが高まります。血液検査では見えない「脂肪の温床」。実は沈黙のトラブルメーカーかもしれません。
八木秀介ら, 医学のあゆみ, 287(3), 191-195, 2023
心筋が硬くなる?
心臓の拍動は、ごくわずかなタイミングのズレでも命に関わる深刻な異常を引き起こします。そんな精密な器官である心筋が、実は“脂肪の影響で硬くなる”可能性が指摘されています※2。
心臓にたまった脂肪細胞が炎症を繰り返すことで、心筋に線維化が生じて硬くなり、本来のしなやかな収縮がうまくいかなくなるのです。その影響は不整脈や心房細動といった電気信号の乱れにも及び、突然死のリスクすら高める可能性も。運動不足や内臓脂肪の蓄積が、知らぬ間に心筋の柔軟性を奪っているかもしれません。
Abe I et. al., Heart Rhythm, 15(11), 1717-1727, 2018
(Mahabadi AA, et. al., J Am Coll Cardiol, 61(13), 1388-1395, 2013より一部改変して作図)
心血管疾患のない4,093名を対象に、最初の心臓周囲脂肪量と8年間の追跡期間中に発生した心筋梗塞や狭心症などの冠動脈イベントとの関連を調査
「やせていれば安全」という危険
ドキドキしたり、脈が飛んだり、兆候が出たら即検査!の心疾患。コレステロールが高い、高血圧といった傾向があれば心疾患リスクが高まるのは周知の通り。でも異所性脂肪はそう簡単ではありません。最近では、メタボの人に心臓周囲脂肪が多い傾向があるだけでなく、やせている人でもたまることがわかっています※3。つまり健康診断やBMIだけでは、気が付きにくいということ。やせているから安心、という油断がかえって発見を遅らせてしまうこともあるのです。
Sato F, et. al., Circ J, 82, 502–508, 2018
( Sato F, et. al., Circ J, 82, 502–508, 2018より一部改変して作図)
日本人374名の観察研究において、心臓周囲脂肪の多少(80cm3を境界値)、内臓脂肪の多少(100cm2を境界値)と冠動脈硬化症との関連を調査
素材の力で、心疾患を減らす
日本人の死因の約14.7%を占め、がんに次いで2番目に多いのが心疾患※4。まさに他人事ではありません。大切なのは、それぞれが食事、運動といった生活習慣の改善に取り組むこと。そんな皆さまの毎日を、私たちは素材の力で支えていく。人が、もっと生きられる社会へ。MGPは挑み続けます。
厚生労働省「令和5年(2023)人口動態」